味の四基本味と言われている、酸味、甘味、塩味、苦味。出汁(だし)昆布の中のグルタミン酸が旨味である事を発見したのは、1908年、東京帝国大学教授の池田菊苗。旨味を加え基本味は五味となりました。
旨味となる出汁昆布や鰹節を使用したおだしは、日本の基本となる伝統料理の手順のひとつです。日本の学者は「だしが効いていない」というのは塩味や酸味が足りないのとは違うという事を経験的に知っており、旨味の存在に早くから気づいていたと言われています。
その後、鰹節からイノシシ酸、シイタケからグアニル酸が新たな旨味成分として発見されました。旨味であるおだしは味噌汁にも欠かせないものなのです。
外国にもフランス料理の出汁、牛や鶏、魚などの動物性の材料のほかに、香味野菜などを入れ、香り付けなどしたものを、ブイヨンやフォンとしてつかうものがあります。また中華の出汁も豚や鶏を長時間煮出し、香味野菜や香辛料を加えた湯(たん)というものもあります。
しかし香味野菜の強い味や香り、肉料理では、肉そのものから出た煮汁が旨味の供給源になり、旨味を増すことに意識が向かなかったようです。旨味は塩味、甘味などが程よく調和した味覚という認識だったようです。
和食の基本となる鰹節。独特の香りと旨味は日本人にとって懐かしさを感じさせるものです。鰹節のイノシン酸は昆布のグルタミン酸と一緒になると相乗効果でより一層、旨味を感じます。これが、一番だし、二番だしと呼ばれるものです。
独特の味と香りをもつ、干し椎茸。シイタケは干すと酵素の働きにより、味、香り、旨味が変化します。旨味成分はグアニル酸。このグアニル酸は加熱して調理していく時に増加します。
煮干しは、二つの意味があり、一つは煮干しいわし、もう一つは魚介類を一度煮熟してから乾燥させるものの総称です。煮干しは栄養価が高く、カルシウム、鉄、ビタミンD、たんぱく質などを豊富に含みます。味噌との相性が良いので、味噌汁にはおすすめの出汁です。
昆布や野菜のグルタミン酸、鰹節や煮干し、肉魚のイノシン酸、干し椎茸やキノコ類のグアニル酸は旨味の相乗効果があると言われています。組み合わせてみたり、この料理にはこのだしが合う!という発見もありです。
外国にはこの旨味に相当する表現が無かったため、現在umamiと表記され、フランス料理やイタリアンの隠し味に日本のだしが使われることも増えてきました。
天然の素材からとるだしは、少し手間かも知れませんが、日本人として本物の味や香りは知っていたいものですね。